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後編:「しまんとぴあ」が紡ぐ、地域の絆と四万十スタイル

後編:「しまんとぴあ」が紡ぐ、地域の絆と四万十スタイル

四万十市総合文化センター「しまんとぴあ」

2025.11.27

インタビュー

 

四万十川と共に生きる町に、2024年に開館した四万十市総合文化センター「しまんとぴあ」。四万十市教育委員会 生涯学習課 社会教育振興係の伊豆綾人係長は、「お客様に合わせた接客をスタッフひとりひとりが心掛けることで、四万十市らしさの伝わる「しまんとスタイル」が創り上げられていくと信じています。」と語った。
 
しまんとスタイルを創り上げているのは、スタッフだけではない。四万十ヒノキの温もりに包まれた空間の中に随所に散りばめられた、四万十川のゆらぎやきらめきを感じさせるデザインだ。中でも訪れた人の目を引くのが、FABRIKOが手掛けた客席イスの張地と、ステージを彩る引割昇降緞帳である。伊豆氏も「四万十川のように、見る位置によって印象が変わるような深みがある」と思いを寄せている。
 
ホールのイスや緞帳にデザインされた「しまんとスタイル」はどのように生まれたのか、デザインが秘めるシティプロモーションの可能性と合わせて、伊豆氏に話を聞いた。


四万十市教育委員会
生涯学習課 社会教育振興係 係長
伊豆 綾人 氏

四万十川をモチーフにデザインした赤色のイス張地、
オリジナルグッズとしても展開

「大ホール「しまんとホール」の赤いイスを初めて見た時、前身であるホールの客席のイメージが、そのまま引き継がれていることに感動しました。他のスタッフも、「色が混じり合いながら展開されていて、それがすごく良い」「その混ざり具合が、キラキラした感じや、きらめきのようなものを表現できていて、とても印象的」と語っていました。市民の意見も取り入れて決まった色なので、皆さんに比較的すんなりと馴染んでいただけたのではないでしょうか。差し色でさまざまな色が入っているが、派手過ぎないところが四万十らしいなと思います。」


1リピートの柄を大きくして張り分けることで、座る席によってさまざまな表情が現れるしまんとホールの張地デザインは、全国的にも珍しい。川の水面のゆらぎのようでもあり、川を大事にきれいに受け継いでいくという、市がキャッチコピーとして掲げる「川とともに生きるまち」を、客席から自然と感じることができる。
 
竣工式や開館プレイベントなどの行事では、イスの張地を使ったバッグ、カードケース、ペンケース、ポーチなどのオリジナルグッズが配布され、グッズを目当てに竣工式に参加した市民もいたほど、非常に好評だった。客席イスの張地は、不特定多数が繰り返し使用する環境下にふさわしい高い耐久性を持つ。形やサイズもさまざまで実用的なことから、関係者からも「どこで買えますか?」と声が上がった。伊豆氏も「これらのデザインは、宣伝やシティプロモーションを兼ねて引き続き活用していきたいと考えています」と希望を込めて語る。




ホール内装の縦横のゆらぎに調和するデザインを目指した、引割昇降緞帳

客席と共に四万十スタイルを創り上げているのが、引割昇降緞帳だ。引割とは、カーテンのように中央で分かれて横方向に開閉する方式で、歌舞伎など伝統芸能の劇場でよく用いられている。しまんとホールの緞帳は、引割り開閉式でありながら、飛ばし上げ昇降式にも対応しているという珍しい形だ。
 
「引き割り幕も、イスの張地と同様に、ホール空間の中でかなりの面積を占めているので、非常にインパクトがあると思います。見る位置によって印象が変わるような深みを持つ色ですね」と、伊豆氏は語る。


この緞帳には、開館に尽力した当時の担当者たちの強い思いが詰まっている。
市からは、「四万十市らしい象徴的なデザインによって市民のアイデンティティを高めたい」「目にする度にポジティブな気持ちを持てるような緞帳にしたい」というリクエストがあった。また、設計事務所からは、「客席の横方向のゆらぎと、ホール壁の木のルーバーの縦方向のゆらぎ、その両方に調和するようなデザインにして欲しい」という要望があった。両者を取り入れながら製作を進めたのが、FABRIKOである。引割幕は、緞帳に比べ、そのドレープによって柄が見えにくいという課題があるが、ドレープがあっても違和感がなく、つなぎ目も目立たないような抽象的なパターンを提案し、採用された。市民にとってなじみある心象風景であり、アイデンティティでもある赤鉄橋が映る水面のゆらぎと煌きを表現している。
 
「コンサートや演劇の公演などで、事前にステージを全開にする場合もありますが、個人的には、この幕を開けるところも演出の一部として使って欲しいです。デザインも、より効果的に映えると思います。こんな風に使ってみたいと思ってもらえるような、この緞帳の良さを市民の方に伝える機会をつくっていきたいですね」



デザインから伝え、継承していく、市にとって大切なテーマ

「しまんとぴあのロゴにも、四万十を象徴する沈下橋がデザインされているんです」と、伊豆氏は「しまんとスタイル」を感じられるデザインについて、引き続き語る。
「『川とともに生きる』という市にとって大切なテーマを、施設を通して市の内外に伝えていくことは、とても大切なことだと思います。客席や緞帳、ロゴのデザインに込めた意味は、市民に向けたホール内のツアー企画などでお伝えするようにしています。既に感じ取っていただけている部分もあるかもしれませんが、これからもPRする機会をつくっていきたい。市外からも多くの方が足を運んでくださるようになっているので、ホールという空間の中で、デザインを通じて四万十市の魅力を感じてもらえれば嬉しいです」


2025年は新たな試みとして、ウクライナのプロバレエ団によるコンサートも予定されており、市内外から多くの来場者が期待される。海を越えてやってくる芸術文化を「しまんとスタイル」で受け入れる機会も、いっそう増えていくに違いない。
地域に根付く文化交流拠点として、しまんとぴあでゆらぎ、紡がれる新たな物語に、市民からも大きな期待が寄せられている。

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