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前編:「しまんとぴあ」が紡ぐ、地域の絆と四万十スタイル
四万十市総合文化センター「しまんとぴあ」
2025.11.27
インタビュー
四万十市の新たな文化・交流拠点、四万十市総合文化センター「しまんとぴあ」は、市内の老朽化した公民館と文化センター、働く婦人の家に代わる、新たな文化活動の拠点として2024年4月にオープンした。地元の四万十ヒノキがふんだんに使われ、開館時には木の香りがしっかり感じられた、四万十の大自然とその温もりが伝わる施設だ。FABRIKOは、しまんとホールのイス張地、緞帳のデザインを手掛けた。
開館から1年、「ここまで人が集う施設になるとは、正直驚いています」と語るのは、四万十市教育委員会 生涯学習課 社会教育振興係の伊豆綾人係長。イベント時に留まらず、四万十川の流れのように、世代を越えた市民がゆるやかに自然に集い合う、そんな交流の風景がごく自然に生まれるこの場所には、ただの文化施設ではない、新しい地域コミュニティの可能性が広がっているという。開館から1年でどのように市民の心を捉え、愛される場所になっていったのか、インタビューを通して紐解く。


四万十市教育委員会
生涯学習課 社会教育振興係 係長
伊豆 綾人 氏
「自然に人が集う場所へ」施設計画当時の願いが反映された現在
「しまんとぴあが開館して、1年が経ちました。開館記念式典の時に、四万十市に新たな施設ができたことを感慨深く思いましたが、実際にこの1年間でこれまではなかったようなさまざまなイベントや興行が開催され、一つ一つが印象に残っています。大規模な公演は月に数回程度ですが、年間にすると18事業ほど。音楽、演劇、落語など多岐に渡り、大ホールや小ホールで催しがある日は、多くの人が集まっていることが建物の外からでも一目で分かります。」


一階の多目的スペースは、建設計画時から、ギャラリーやイベント会場としての活用も想定されていた。共用ロビーも広く、ガラス張りの開放的な設計のため、外から中の活動の様子もよく伺い知ることができる。
旧施設を訪れるのは、施設に用事のある人が中心だったが、しまんとぴあは違う。目的がなくても気軽に立ち寄れる、世代を問わず人々が自然と集まり交流できる、そんな賑わいある施設へと変化を狙っている。



「子供が集うようになったのが、大きな変化です。予想を超えて多いですね」と、伊豆氏は語る。竣工から1年が経った今、実際はどのような様子なのか。
「これまでは、子どもが集まるのは子ども向けのイベントがある時のみでした。現在は、学校帰りにちょっと立ち寄ったり、テスト期間中には1階2階のフリースペースで勉強したり、文化的な教室などに集まったり、子どもの居場所として浸透しているように思います。
開館当初は、子どもだけが利用している時にマナーの問題をどのように伝えるかなど悩むこともありました。いまは、地域の一人の大人として注意できる良い関係性が、子どもたちとしまんとぴあの職員との間に培われてきていますね。そういった結果として、知らない人同士でも声を掛け合う、世代間の交流が増えるなどの良い循環が生まれているのではないでしょうか。
市としては、しまんとぴあを文化・芸術・生涯学習の拠点にしていきたいと考えています。「何かするならしまんとぴあで」という意識が浸透していけば嬉しい。若い人にはこれからも積極的に使って欲しいですし、ここに活動を集約させたいという思いが常にあります。」



開館前の懸念事項「有料化」は、市民に受け入れられたのか
これまでの施設と大きく変わったのは、使用料だ。1時間数百円ではあるものの、無料から有料に変わっている。市民にどのように受け止められるのだろうかと、開館前は不安もあったが、今、変化しつつあると伊豆氏は語る。
「開館前後までは、有料化を課題視する声も正直ありました。今は少なくなりましたね。おそらく、実際に施設を利用した市民の方々が、金額に納得してくださったのはないでしょうか。特にホールは設備や備品も充実し、舞台もかなり広くなったので、料金は高くなったけれど昔の文化センターと比べて素晴らしい施設になった、と感じていただけている印象です。
安くして欲しいという声も、もちろんあります。大小のホールを利用する場合は、市が会場を借りることで無料にする芸術祭という事業がありますし、教育委員会が後援の場合は半額での利用、共催であれば全額免除になります。申請には積極的に応じて、多くの方に利用してもらえればと考えています。」



市民に愛されるホールに根付き始めた、四万十ならではのデザイン
新たな交流拠点として多くの市民が集い、有料化というハードルも超えた手応えを感じる伊豆氏。その背景にある「四万十らしさ」にも思いを覗かせた。
「しまんとぴあの運営は、民間の指定管理者に委託しています。全国で70以上の公共施設を管理するノウハウを持った会社ですが、四国で運営を手掛ける施設はここが初めてなので、しまんとぴあならではの施設運営を一緒に作り上げていきたいという思いで、1年間取り組んで来ました。礼儀正しく、丁寧な接客、そして時には冗談を交えるなど、フランクな雰囲気で接することも大切にしています。お客様に合わせた接客をスタッフひとりひとりが心掛けることで、四万十市らしさの伝わる「しまんとスタイル」が創り上げられていくと信じています。」
四万十の地域性や魅力が伝わる「しまんとスタイル」は、「無意識のうちにスタッフや市民に浸透している面もあります」とも、伊豆氏は語る。その秘密は、前身である施設のテイストを受け継ぎながらデザインされた、ホールの空間にあるという。四万十の魅力を織り紡ぐ「赤色」と「ゆらぎ」に迫る。
後編はこちら >>
四万十市総合文化センター「しまんとぴあ」特集記事 <後編>
関連リンク
居室データ
- 施主 / 高知県四万十市
- 設計 / 株式会社東畑建築事務所・有限会社鳥設計事務所
- オープン / 2024年4月
- 席数 / 805
- 関連リンク / 四万十市総合文化センターしまんとぴあ|株式会社FABRIKO WEBサイト
- 椅子 / コトブキシーティング株式会社
